資料

2011年5月27日

長野県内における労働者の東北復興支援・被曝労働等に関する声明

2011年5月27日

 

長野県内における労働者の東北復興支援・被曝労働等に関する声明

 

生存を支える会(仮)

松本市浅間温泉2−2−35 tel.090-4153-7749(八木)

労働組合LCCながの

長野市中御所2−20−2 tel.090-8476-8127(高橋)

 

大阪市において「宮城の復興作業」として紹介された仕事が、実際には福島第一原発周辺での瓦礫撤去作業であったことが、事件として報道された。

 その同時期、私たちは長野県内において、生活保護受給者等を福島原発事故処理の被曝労働に動員しようとする手配師の存在を確認した。勧誘された労働者によれば、被曝の危険性に関する説明は殆ど受けていない。被曝や他の事故の際の補償に関する説明も無かったと思われる。原発事故現場での労働に被曝の危険が高いことは言うまでもなく、被曝の危険性や身体への影響について十分なコンセンサスの無いまま、労働者を危地に送り込むことは不当な人権侵害である。とりわけ、日々の収入について選択の余地が少なく、かつ、一般に被曝の危険性についての情報アクセスが困難な困窮者を主な動員ターゲットに据えている点で、大阪と長野における手配師は極めて悪質な貧困ビジネスを行っていると言うことができる。困窮者の情報からの疎外をいいことに、その足元を見て使い捨ての道具のように扱う「死のビジネス」を、絶対に許してはならない。

 私たち二団体はこの「事件」を、私たちの多くをも含む下層労働者全体をめぐる問題と捉える。報道において、今なお原発現場で放射能に晒される労働者の「命がけ」が賛美される一方で、そこに映る「東電協力会社の作業員」が具体的にいったいどこの誰なのかは、およそ報道されていない。下請け・孫請け・ひ孫請……その末端に、ほとんどの人がやりたがらない被曝労働を強いられる人々がいる。その多くが、山谷や釜ヶ埼などの寄せ場からかき集められた野宿労働者・日雇い労働者であることは従来より指摘されてきた周知の事実である。今回の「事件」は、単に悪質な手配師の問題のみならず、市民社会の「豊かさ」を支える為に、選択肢の乏しい下層労働者を犠牲にし、それでいて野宿者など下層労働者の存在を嫌悪しその実態を隠し続ける私たちの社会・経済システム全体に問題を提起するものとして捉えねばならないだろう。

 敢えて言うならば、行政による失業者への福祉とは、このような劣悪な労働条件を隠しての勧誘・労働の強要から労働者の人権を守る為にある。 ところが、長野県のある福祉事務所は宮城県での震災復旧作業への求人情報を得ていたが、前述の手配師か彼に近しい者は、この作業への勧誘も行い、じっさい人を送り込んでいた。結局、生活保護受給者を含め、宮城におもむいた人たちは、「現地の受け入れ体制が整っていなかった」ことによって数日で失職し長野県に戻った。このような不確かな雇用関係では就労と言えない。これを就労とみなし、保護の停廃止や、住宅契約の解除が行なわれていた場合、当該受給者の生活は、一層破壊されていたのではないか。福祉事務所は、求人の情報を得、しかもこれに手配師らがかかわっていることを知りながら、労働条件等を確かめることも、就労指導の中で受給者に注意を喚起することもなく、結果として彼らに危機を負わせたことの責任を免れない。

就労現場・雇用期間・賃金条件・社会保障の有無など労働の質を問わず、いたずらに「早期の就労自立」を焦る福祉事務所の日常の姿勢が、貧困ビジネスの横行を含むいびつな事態を招いた一因と言わざるを得ない。このことを看過した場合、行政による福祉は、ただ困窮者を更に人の嫌がる危険で劣悪な労働条件のもとへと誘導する動員装置へと堕するに違いない。その根底にあるものは、困窮者を人ではなくコストと見なし、国家・資本・公共への貢献を急がせる対象としか眼差さない冷酷さである。

東日本大震災と原発事故により、復興「特需」を期待し、この恩恵に与ろうとする醜悪な者たちの跋扈が、今後も予想される。企業・行政は違法・不当な手配師の介入を許さず、労働者の生存権と尊厳を守ることに力を尽くすべきである。

 

以上の観点から、以下、関係各位に要望する。

 

行政の労政部局(労働基準監督署・公共職業安定所など含む)は、不法・不当な手配師による「復興」関係貧困ビジネスの横行に対し、警戒感を持って臨むこと。

 

福祉事務所など福祉行政は、東日本大震災に関連する受け入れの不確かな就労勧誘によって、住居契約や福祉を解除させ、困窮者を一層不安定な状態に追い込むことのないよう、特に注意すること。

 

公共・民間にかかわらず、就労支援・職業紹介を業とするものは、その職業紹介から、原発事故にかかわる危険な労働現場を厳格に除外すべきである。なお、「危険」を判断する基準にあたり、政府による被曝量制限基準には多数の異論があり、これをそのまま適用することは妥当ではない。

 

●野宿者など失業者に接し、その生活と就労を支援するすべての団体は、速やかに大阪市・長野県の「事件」を対象相談者に周知し、被曝にかかる十分な知識を提供するとともに、不法な手配師による求人・勧誘への注意を促すべきである。

 

●報道関係者は、被曝労働者の紹介に際し、「東電協力会社の作業員」ではなく、その具体的な所属と雇用形態について正確に報道すること。